- 作者: 片山恭一
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/06/26
- メディア: 単行本
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読了。
相変わらずの時事ネタの多さ。時間を経ると読みにくくなってしまうものの、刊行日近くでは状況が手に取るように分かるはず。
内容としては哲学的人生観。「宇宙を孕む風」にも人生観もあるけども結婚観に近いものだった気もする。
前半は人物関係の把握や状況の理解に目を奪われてしまいがちで読むのが少し辛い。何せ登場人物がそれなりの数いて、女性は殆どが○子で(陽子、寛子、敏子etc)、[同名が二人いる](ネタバレ注意/ストーリーの根幹に関わるので伏字)。
一方で、中盤から終盤にかけては魅せられる。なかなかいい書き方をしているなと思う。
終わり方はすんなり。落ち着くところに落ち着いたといったところ。「宇宙を孕む風」よりも綺麗な終わり方か。どちらがいいかと言われると、こっちだと思う。もっとも、"個人的に"だけども。
氏は、昔は学生の恋愛もの(「世界の中心で愛を叫ぶ」に代表される。他は「君の知らないところで世界は動く」「満月の夜、モビイ・ディックが」など)ばかりだったのだが、9.11──米同時多発テロを扱った「雨の日のイルカたちは」以降から時事ネタ+人生観がその主となり主人公の年齢がぐっとあがった(20後半〜40前半)。つまり、有名になった「世界の中心で愛を叫ぶ」と同様の感覚で最近刊行された氏の書籍を読むというのはあまり宜しくないということだ。
全作品を通して一貫しているテーマは「生と死」、若しくは「喪失」。"なくしたことによる穴"とか"なくすということ"とか、そういったことがメインである。
参考と自分のまとめのために。
- ジョン・レノンを信じるな(9784048730358)
ジョン・レノンの死
- 世界の中心で、愛をさけぶ (9784093860727)
- 満月の夜、モビイ・ディックが (9784093861144)
精神病("闇を抱えている"という表現しかできないが…)
- 空のレンズ (9784591076606)
現実と空想との狭間のような話
- 君の知らないところで世界は動く (9784591077979)
精神病(摂食障害)
- もしも私が、そこにいるならば (9784093861250) - 短編集
生と死
- 雨の日のイルカたちは (9784163228808) - 短編集
9.11
- 最後に咲く花 (9784093861489)
自殺ほう助
- 船泊まりまで (9784093861663)
- 壊れた光,雲の影 (9784163260105)
末期癌
- 遠ざかる家 (9784093862165)
- 宇宙を孕む風(9784334926397)
若くして亡くなった母に主眼。女性が主人公なのは初めて
病気はあまり主立って出てこない
(主人公自身と周囲の人間における)親と子の人間関係に重点を置いている